今月の法話



「心に栄養を!」

 私たちは誰もが、子供から大人へと成長していきますが、それは身体だけでなく心も成長していきます。

 この二つは車の両輪のようなもので、どちらも大事なものですが、私たちは目に見える身体には何かと気を使いますが、目に見えない心の方は、ついついおろそかになりがちです。

 しかし、身体に栄養が欠かせないように、心にも十分栄養を与えることが必要です。

 その心の栄養で一番大事なものは何かと言いますと、それは「認めてあげる」という栄養です。

 と言いますのも、私たち人間には元々人格的欲求というものがあり、その一番強いものが「承認の欲求」だと言われています。それが「認めてもらいたい」というものです。

 その欲求が心に満たされると、人間は俄然やる気が出てきて、自分の持っている能力を最大限に発揮することが出来るのです。

 よく心理学では次のような実験をするそうです。

 知能程度が同じ位の子供たちを三つの組に分け、一つの組はほめる、一つの組は叱る、一つの組はほったらかしにしておくのです。そうするとその結果はどうなるかと言いますと、ほったらかしの組はまるでだめ。叱った組は少し良くなりますが、ほめた組は最もやる気を見せ、学力が向上しているのです。

 このように、認めてあげるという栄養を心に満たしてあげることが人間の心の成長に計り知れない影響を与えるのです。

 ここに、「坂東先生の教育講座」という一冊の本がありますが、その中に北海道で絵を教えている先生のことが書かれていました。

 その先生というのは絵を教える名人で、その先生に教わった生徒は毎年NHKで行われる絵画コンクールでみんな入選するというのです。

 そこで、この本の著者の坂東先生がその絵の先生のところに話を伺いに行かれたのです。

「先生、どうやって子供さんに絵を指導なさるのですか」と尋ねると「私はああ描け、こう描けなんて一言も言わないんですよ」と言うのです。

「そしたらどうやって教えるのですか」とさらに尋ねると、その先生は子供の絵を一人残らず一堂に並べて、色が良かったら色をほめてやる。形が良かったら形をほめてやる。

 子供の絵にはどっか必ずよいところがあるから、それをほめてあげるのですと言うのです。

 そこで坂東先生は「色も形も悪かったらどうするんですか。どう見ても乱暴にしか描いてないような絵の時は」と聞くと「あ、坂東先生、乱暴って言うからだめなんですよ。力強く書いているとほめてあげるんですよ。出来れば英語でダイナミックだってほめればもっといいですが。そうすれば、みんな絵が好きになるんです」と、答えられたそうです。

 坂東先生はこの本の中で、「性格の欠点はまた長所でもあるのですから、決して悪く言ってはいけない、私はどんな子供でも認めてあげるのです」とおっしゃっています。

 どのような認め方をするのかと言いますと例えば、早とちりするような子供には「このおっちょこちょい」と言うのではなく「いやあ、スピーディーだね」とほめてあげるのです。

 また動作の鈍い子供には、「こののろまnと言うのではなく「慎重なんだね」とほめてあげるそうです。或いは神経質な子には「よく気がつくんだね」と認めてあげ、生意気な子には「理論家だね」と認めてあげると言うのです。こう言われてみると、確かに人間の欠点は長所だということが分かります。

 そうやって坂東先生は子供たち一人一人を深い愛情を持って認めてあげれば、どんな子供でも素晴しい人間に成長していくとおっしゃっています。

 まことに素晴しい教育実践だと思います。

 このお話を聞いて私は、教育というのは「どう教えたかではなく、どう受け取ったか」ということが何よりも大事なことだと改めて知らされました。

 この先生方の子供たちに接する心は、阿弥陀さまのお心に大変よく似ています。

 阿弥陀さまは私たちに「こうしなくてはだめだ、ああしなくてはだめだ」とは決しておっしゃいません。

 どんな人間であっても「そのままで良いですよ」と無条件で認めてくださるのです。

「そのままで良い」ということは私が私であることを認めて下さっているのです。

 それは、この世に生まれた私のいのちに確かな価値が与えられるということです。そこに、深い安心感とこの人生を生き抜く力が生まれてくるのです。

 昔から「十人十色」と言われていますように、私たちは夫々、違った色を持っています。

 今、私たちの社会は、そんな自分の持っている色が無視されたり、押さえつけられたり、或いは無理に違う色に変えられることが余りにも多いと思います。

 それは社会全体が心の栄養障害を起こしているのです。

 その心の栄養障害がいじめや、学級崩壊、或いは犯罪の低年齢化といった症状になって現れているのです。これは栄養障害という病巣から吹き出している膿です。

 このような現実を見るにつけ、「だからこそ、阿弥陀さまのお心に出会っていただきたい」
と私は願わずにはおれないのです。

 無条件で私の色を認めてくださる阿弥陀さまのお心に出会えば、きっと一人一人の心にこの上もない栄養が満たされるでしょう。

 そうして、その時初めて、お互いが夫々の色を精一杯輝かし、照らしあう素晴しい世界が実現するのです。

 まさに阿弥陀さまは偉大なるいのちの教育者であり、心の栄養士なのです。


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