「だろう人生・かも知れない人生」


 先日、運転免許証の更新のため、講習を受けました。

 その講習で、運転の仕方に、 「だろう運転」と「かも知れない運転」の2種類があることを聞きました。

 どのような運転かと言いますと、

 例えば、自分の運転している車の前方を子供が歩いているのを発見したとします。

 その時、 「多分、前方の子供は自分の車の前を急に横切ったりしないだろう」と、安易に判断をして、そのままのスピードで運転するのが「だろう運転」で、 「ひょっとすると、前方の子供は、後ろも見ずに、急に車の前を横切るかもしれない」と、危険を予測しながら慎重に運転するのが「かも知れない運転」です。

 事故を起こしやすいのは、当然、前者の「だろう運転」です。

 これからは出来るだけ「かも知れない運転」を心がけ、事故を起こさないようにしましょうということでした。

 この説明を聞いて、私は「なるほどナー」と感心すると同時に、私たちの人生も「だろう運転・かもしれない運転」ならぬ、 「だろう人生・かもしれない人生」の二つの生き方があると思いました。

 そこで改めて、私たちの日暮らしをふり返ってみますと、私たちが周りの人とよく衝突するのは、この「だろう人生」にあるのだなと気付かされます。

 「だろう人生」というのは、「多分こうなるだろう、ああなるだろう」と自分の安易な思い込みに基づいて日暮らしをしていくというものです。

 もちろん,その思い込みが間違っていなければ衝突は起きないのですが、 「だろう人生」の場合、その思い込みが安易なために,思い違いをしていることが良くあります。

 それによって衝突が起こるのです。

 以前,こんな話を聞いたことがあります。

 Aさんという人が、親しい友人であるBさんに、 「ここだけの話ですよ」と断って、ある人の悪口をしやべったのだそうです。

 それを聞いたBさんが、こともあろうに「ここだけの話ですよ」と言いながら、友人のCさんにしやべってしまったのです。

 そのCさんがさらにまたDさんにしやべり、とうとう、 「ここだけの話」だったものが、周りの人全員に知れ渡ることになったのです。

 それを知ったAさんは

「あれほど内緒にしてと言うたのに、 Bさんは本当に口が軽い人じゃ。あんな人とは思わなんだ」

と、すごい剣幕で怒り、親しかったBさんと仲違いしてしまったのです。

 すると. BさんもBさんでCさんに、 「あれほど内緒にしてと言うたのに,何でしやぺったん。 Cさん、あんたは信頼出来ん人じや」といって、Cさんと仲違いしてしまったのです。

 同じように、 CさんもDさんと仲違いしてしまったのです。

 こうして、 AさんとBさん. BさんとCさん、 CさんとDさんの間で次々と衝突が起こり、仲のよかった友人がばらばらになってしまったということでした。

 この衝突の原因は,元はと言えば、 AさんがBさんのことを「この人なら口が堅いだろう。

 内緒にしておいてくれるだろう。多分,他人にしやべったりはしないだろう」と安易に思い込んでいたことにあります。

 ところが、それが全くの思い違いであったことによって、 「あんな人とは思わなかった。信頼できない人だ」ということで衝突が起こったのです。

 もちろん、Bさんたちにも同じことが言えます。

 まさに、全員が「だろう人生」を送っていたのです。

 このような生き方を続ける限り,私たちの日暮らしから、衝突がなくなることは,まずありません。

 ここで大事なことは、それぞれが自分の思い込みが如何に甘いものであるか,そのことに気付くことだと思います。

 それに気付けば、たとえ衝突しても、これまでのように、相手を一方的に非難するのではなく、
「あー自分の思い込みが甘かったんだな-」

と、己の非に目が向き、その衝突を最小限に食い止めることが出来るのです。

 そうなれば、これまでの
「だろう人生」が安易で危うい生き方であったかを、改めて知ることが出来るのです。知れば、当然「だろう人生」ではない人生を求めていこうとします。

 そこに、「かも知れない人生」というものが考えられてくるのです。

「かも知れない人生は」は、「ひょっとしてこうなるかも知れない、ああなるかも知れない」というように、あらゆる状況を想定しながら慎重に歩む人生です。

 そうして、いつも自分の見方が甘くないか、自らに問いかけていきます。

 ですから、 「だろう人生」のような思い違いも少なくなり、周りの人との衝突も少なくなります。しかも、どのようなことが起きても柔軟に対応する生き方が,出来るようになるの
です。

「かも知れない人生」は、まさに、地に足の着いた素晴らしい人生です。

「だろう人生」を送ることの多い私たちにとって、この「かもしれない人生」は、中々実行困難なことだとは思います。

 しかし、たとえ困難な道であろうとも、 「かもしれない人生」を目指していく努力だけは惜 しまないようにしたいと思います。

 そうすれば、きっと周りの人との衝突が、私の日暮らしから確実に減ってくると思います。


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