「ジャズコーラスグループ・タイムファイブ」  H19・12放送

 新本堂建立を機に、皆さんに親しまれるお寺作りを目指して、毎年、年3回程度本堂でコンサートを開いています。

 さまざまなジャンルの方にお越しいただいていますが、出演者の方には本堂の響きのよさと、その荘厳な雰囲気が大変好評のようです。

 お招きしている出演者の中で、毎年欠かさず来て頂いている方にタイムファイブという男性五人のジャズコーラスグループがいます。

 実はこのグループと私は、同じ大学の軽音楽部に所属していて、二人は同級生、三人は後輩という間柄です。

 今年で結成38年目を迎えるグループですが、音楽業界では大変高い評価を得ており、平成12年に「文化庁芸術選奨文部大臣賞」を受賞、平成17年に「ミュージックペンクラブ賞」を受賞、また平成元年にはNHK紅白歌合戦にも出場するなど、ジャズコーラスグループとしては現在日本の第一人者であります。

 お寺でのコンサートでは、毎年色々と趣向を凝らして、私たちを楽しませてくれていますが、皆さんに大いに受けるものに「コーラス教室」という企画物があります。

 どういったことをするのかと言いますと、私たちに馴染み深い歌──今年は「宇宙戦艦ヤマト」でしたが──その歌を、まず主旋律を受け持っているメンバーの一人が歌います。

 主旋律ですから、当然観客の皆さんの耳には心地よく聞こえてきます。

 その後、各パートを受け持っているメンバーが、一人ずつ自分のパートを歌うのですが、音楽性の高いこのグループは大変難しい音を使っているため、素人の耳には、まるででたらめに歌っているように聞こえるのです。

 余りにも奇妙で滑稽なメロディーですので、客席のあちこちから笑い声が聞こえてきます。

 果たしてこんなメロディーがハーモニーになるのかと心配するほどです。
こうして、各メンバーが夫々自分のパートを歌い終わると、最後に全員で合唱するのですが、これがまた、まことに素晴しいハーモニ一になっているのです。

 各パートのメロディーのおかしさと、一斉に歌った時のハーモニーの美しさの落差に、観客は大いに驚き、また感動させられるというわけです。

 歌い終えた後、グループのリーダーが解説いたします。

 「各パートがそれぞれ練習してきたものを、『セーノ』で一斉に歌っても、決して美しいハーモニイ一にはなりません。

 コーラスで大事なことは全体の調和です。

 ですから一人一人が、がむしやらに声を張り上げてもダメですし、また反対に遠慮して声を出さなくても、きれいなハーモニーにはなりません。

 そのためには、メンバーがそれぞれ周りの音をよく聞いて、全員が心を一つにして、強くもなく弱くもない、最もバランスの良い声を出すことが大事なのです。

 言ってみれば、自己主張が強すぎてもいけないが、自己の存在感がなくてもいけないということになるでしょうか」

 私はこの解説を聞いて、これはまさに仏教で説く「縁起の道理」のことを言っているのではないかと思いました。

 縁起の道理とは、「この世の中のものはみんな相依り相関わっており、持ちつ持たれつなんだ」ということです。

 お釈迦さまは、それを分かりやすく説明するために、私たち人間を、魚を掬う網の「目」に誓えています。

 「網の目の一つ一つは、大して役に立っていないように見えるが、その一つが破れてしまえば、網がその役目を果たさなくなるように、私たち一人一人が自分の与えられた役目をしっかりと果たさなければ、この社会は成り立たなくなる。
 しかも、一つの網の目は網全体に通じており、網全体はまた一つの網の目を生かしている。
 我々人間もまたしかりである」と仰っています。

 先ほどのコーラスで言えば、パートを受け持っている一人が、全体の調和を乱すような大声を張り上げたり、反対に手を抜いて声を出さなかったりするとコーラスとして成り立たないと解説していたことと全く同じことだと思います。

 しかも、一人のパートはコーラス全体を成り立たせており、またコーラスという全体は一人のパートを生かしているのです。

 縁起の道理で大事なことは、「この私は周りのものによって生かされている」という事実に気づいていくことです。

 「生かされている私である」ということに目覚めることによって、今度は周りの人々のために、私の出来ることを精一杯尽くしていこうという思いが生まれてくるのです。

 そこに「この世は持ちつ持たれつだなぁ」という味わいが生まれてくるのです。
親しまれるお寺作りの一環として始めた本堂でのコンサートですが、この様に仏教的な趣を感じてもらえるといった思わぬ効果もあり、私としては大変うれしく思っているところであります。

 さて、次回はタイムファイブの皆さんはどのような企画を披露してくれるのでしょうか。

大いに楽しみにしています。


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